インターネット上の著作権問題については大まかに次のような問題があります。
・ソフトウェア、画像、音楽等の複製に関する問題(コンテンツ、私的使用等)
・ 文章等の引用に関する問題(コンテンツ)
・ 公表権、公衆送信権、送信可能化権に関する問題(アップロード、再配信等)
・ ダウンロード違法化 (ダウンロード)
これらはそれぞれ、複製、引用、公衆送信権などの項目で解説されるので、
ここでは上記以外に、特に情報技術・デジタル技術特有の、あまり知られていない著作権に関する慣習と業界標準(用語)について解説します。
<ソフトウェアの保護について>
IT技術で欠かせないソフトウェアは、著作権で保護されていると同時に、個別のソフトウェアごとの「ライセンス(使用許諾)」によって保護されています。
本来、著作権には「使用許諾権」のようなものはありません。したがって、この「ライセンス」はソフトウェアを保護するために慣習的に認められている保護形態です。厳密に言うと双方の意思の合致が必要な「契約」とは多少異なります。
ソフトウェアの販売などについて利用されている、(商品を薄いラップなどで包装し)開封すること自体がライセンスへの同意と見なされる方式。
ソフトウェアの販売者としては保証が無い旨や再配布の制限などを使用者に同意させたいが、ソフトウェアの販売形態として、使用者(購入者と)と直接に利用契約を締結することはまれであるため、このような方式が行われるようになった。
実際には合意がない(意思の合致がない)、規約を読んでいない、条件を交渉する余地がないにもかかわらず条項に従わなければならないので、問題とされている。日本では今のところ判例はない。米国の判例では、このような方式でも(開封後でも返品等が可能であるので)有効とされている。
Windows用の一般のソフトウェアのように、ソフトの複製や改変を著作権・ライセンスで制限している方式のこと。市販されているソフトウェアの大部分はこの方式。
LINUXなどのオープンソースソフトウェアに多く利用されているライセンス方式。
GPLでは、ソフトウェアを利用・改変・再配布する者は、あらかじめ利用者に次の事項を許諾した上で配布等を行う。
・プログラムの実行
・ソースコードの公開・改良
・複製物の再配布
・改良されたプログラムの頒布
したがって、オープンソースのソフトウェアは自由に利用できるが、その改良品も半永続的に自由に改良・再配布が行える。
これによって、OSの分野ではWindows、MACのほかにオープンソースのLINUX系列のソフトが大きなシェアを持っている(特にサーバー用OS)。LINUX系列のソフトは著作権料がいらないため、Windows等と比べると圧倒的に安価である。無料のOffice互換ソフトであるOpenOfficeもこの方式で開発されている。
MPL、LGPLなどの派生版がある。コピーライトをもじって「CopyLeft」とも呼ばれる。
ソフトウェア業界では、フリーのソースコードを利用したソフトウェアを販売等する場合には、このライセンス方式に従うことに留意しなければならない。
BSDは、頒布後の改良版についてソースコードの公開などの強制を外したもの。
その代わり保証が無い旨・著作権・ライセンス条文の表示は行わなければならない。
<コンテンツの利用(私的使用)について>
テレビ放送用のデジタル録音録画機器における、日本の業界標準の著作権管理方式。2008年7月4日からこの方式が行われている。
従来は「コピーワンス方式」といって、録画した画像についてコピーまたはムーブが一回のみしかできない方式がとられていた。しかしこの方式ではムーブに失敗すると元のデータが消えてしまうという問題があり、改良した方式が求められた。
新しい方式により、デジタルテレビ放送の録画データは9回のコピーと1回のムーブができることとなった。
しかし本来ならば、私的利用の範囲では自由にコピーできなければおかしいという批判がある。この方式の採用の際には、著作権団体が「私的録音録画補償金」の対象をハードディスク録画機器にも広げるように求め、メーカー側と激しく対立し、批判された。このような業界標準を採用しているのは日本だけである。
・コピー等を防止するための技術的保護手段を回避するための装置・プログラムを譲渡等の行為には罰則がある(120条の2)。
・音楽データや、ビデオ画像などに付加されている著作権管理情報を削除、改変する行為、著作権管理情報を改変したデータを頒布等する行為は侵害とみなされる(113条3項)。
・私的使用であっても、技術的保護手段を回避して行われた複製は侵害となる(30条1項2号)