令和6年1月1日に施行された改正意匠法について、ご紹介いたします。
1.改正前の新規性喪失の例外規定について
意匠登録を受けるためには、新規な意匠であること(新規性)、公開された意匠から容易に創作できないこと(創作非容易性)が必要です。
新規性喪失の例外規定とは、意匠登録を受ける権利を有する者の行為によって公開された意匠であっても、公開された日から1年以内に限り、公開意匠が新規性・創作非容易性欠如の根拠から除外される制度です。
しかし、改正前においては、公開が複数あった場合にそれぞれの公開について当該手続きを要することが多く、出願人の大きな負担となっていました。
2.改正後の変更点
改正により、全ての公開ではなく、最先の日の公開のうち1つについて証明することで、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるようになりました
以下のフローチャートにあるように、【公開①】の後に【公開②】があった場合(2024年2月1日【公開①】と3月1日【公開②】)、最先の日の【公開①】のみ、証明書を提出すれば、新規性喪失の例外規定の適用を受けられます。例えば、意匠登録を受ける権利を有する者が、同一の取引先へ同一の商品を複数回納品し、初回納品による【公開①】と、二回目の納品により【公開②】がなされた、ケースが考えられます。
ただし、第三者が同じ意匠を独自に創作し、公開していた場合には、改正前と同様に登録を受けることができないので、注意が必要です。
3.Q&A
(1)上の図の【公開②】を特許庁が発見した場合、拒絶の理由となりますか?
いいえ。【公開②】の意匠は、新規性・創作非容易性の判断においては公知の意匠に該当するに至らなかったものと取り扱われ、拒絶の理由となりません。
(2)新規性喪失の例外を受けるために必要な書類はどのようなものですか?提出するタイミングはいつですか?
願書に、新規性喪失の例外の適用を受ける旨の記載が必要です。
また、出願日から30日以内に、新規性の喪失の例外証明書の提出が必要です。証明書には、公開の事実(公開日、公開場所、公開者、公開意匠の内容)等、を記載します。
(3)公開した意匠と実際の出願された意匠が少し異なる場合に注意点はありますか?
公知の意匠に該当するに至らなかったものと扱われるのは、実際に公開された意匠と同一又は類似の範囲に限られます。よって、出願した意匠が公開意匠と非類似の場合、新規性喪失の例外規定の適用を受けられませんので、注意が必要です。
(4)例えば、上の図の【公開①】を見た人がSNSに意匠の写真を掲載した場合の【公開②】では、どうなりますか?
【公開①】の事実を証明すれば、【公開②】について証明は不要です。SNSによって情報が拡散されることが多い実情に沿う制度となりました。
4.参考文献
https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/index.html