和解の内容は以下のとおり。
「吉本興業側がパッケージの図柄を変更し、原則として関西6府県での販売に限る。賠償金は支払わない。
新しい図柄での販売は4月からで「白い恋人」と間違わない内容に変える。販売は滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の6府県に限るが、北海道と青森県を除き、百貨店が催す物産展などでも年36回まで認める。」(日本経済新聞2013年2月13日電子版)
石屋製菓側にとっては、「面白い恋人」が近畿から北海道方面に進出して販売されることと、パッケージの外観の印象が似ていることを問題視していたと思われるので、この2点が解決されれば和解に同意できたということだと考えられる。
パロディ商標の問題については、著名ブランド側からすると、商標法上も不正競争防止法上も、著名商標と類似と認められないと他人の使用を排除できない。商標法の改正の議論では、著名商標の権利範囲について、希釈化あるいは汚染のおそれがある他人の使用にまで禁止的な効力を拡大するという意見が出ているが、保護範囲の公示、侵害の予見可能性の観点から問題がある。(産業構造審議会知的財産政策部会、商標制度小委員会報告書「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年2月、参照)
前記(「面白い恋人」事件、2011年12月記事参照)のとおり、著名商標の希釈化、汚染防止の観点から類似範囲を広く解することが考えられるが、類似・非類似で争うよりも、パロディとして成立するフェアユース(公正使用)として認められる使用かを争う法制度を議論してはどうかと考える。(米国商標法(43条(c)(3)(A)(ii))では、「著名商標の所有者、 又は著名商標の所有者の商品又はサービスを特定して、パロディ化し、批評し又は論評すること」は、自己の商品・役務の出所表示としての使用でなければフェアユースに当たる。)
(弁理士 西村雅子)