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著作権と意匠権の違い

著作権と意匠権の違い

意匠権と商標権の両方を考えると長く複雑になりますので、まず意匠権との対比で考えます。

 

[保護対象]

著作物も意匠(デザイン)も、共に人間の創作の成果です。例えば人形を作ったら、どちらで保護されるのでしょうか。オリジナルの模様の傘を作った場合は? コンピュータの画面表示は? ここではそのような場合について解説します。

 

① まず第一に、日本の意匠法で対象となっているものは、「工業上利用することができる」ものに限られています。従って、例えば、一品製作の人形など、物品のデザインであっても工業的に量産できないものは意匠法の対象とはなりません。

一方、著作権の対象となるのは、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である必要があります。したがって、例えばノートパソコンや産業機械のデザインについては、優れた工業デザインであっても、著作権の対象になりません。

 

② 次に意匠権の保護対象は「物品の形状、模様、もしくは色彩」等に限られています。したがって音楽や文学、絵画や写真そのものについては意匠権の対象となりません。

なお、コンピュータの画面に映ったものは、その物品に固有のものでないため、意匠法では原則として保護されません。(例外的に画面デザインの保護が可能な物品もあります。)

 

③ 意匠の保護対象は、新規であって創作容易でないもの、に限られています。著作権では著作物が世間的に知られているかどうかは保護にあまり関係ありませんが、意匠権では、すでに知れ渡っているデザインは原則として保護されません。例えばオリジナル模様の傘を意匠権で保護するには、それが世間に知られておらず、容易に創作できないものである必要があります。

 

[保護形式]

意匠法で保護を受けるには、所定の形式に従って特許庁に出願し、登録を得なければなりません。これには費用もかかります。一方、著作権法での保護には、このような出願や登録は不要です。著作権は創作と同時に発生します。

 

[効力範囲]

意匠権の効力が及ぶのは、「登録意匠及びこれに類似する意匠」とされています。つまり真似して作ったものであろうと偶然にできたものであろうと、類似していれば効力の範囲に入ります。

この点、他人の著作物に依拠していることを条件として、翻案・二次的著作物などにも権利が及ぶ著作権とは、権利の範囲の考え方に大きな違いがあります。偶然似ていても、全くのオリジナルであれば著作権の効力は及びません。このような考え方から、著作権は相対的独占権であると言われます。

 

[侵害となる行為]

著作権で侵害となる行為は、主に著作物の利用、すなわち複製、翻案、頒布、貸与、展示、譲渡、送信可能化などです。これに対し意匠権では、意匠の実施、すなわち製造、使用、譲渡、貸し渡し等が対象となります。これらは似ているようでありながら、それぞれ概念に相違があります。

例えばある陶製の人形に著作権と意匠権の双方が存在する場合、これに依拠した類似品を製造すると、「著作物の複製」であると同時に「類似する意匠の製造」となり、双方が適用可能となります。しかし、この人形を半透明にし、ルームランプにしたらどうなるでしょうか。元の人形の形状等に依拠していることから、著作物の翻案として著作権の効力は及ぶと考えられます。一方、意匠権としては物品が非類似となり、権利の効力が及ばなくなります。

また、著作権法では文化的活動の保護のため、私的利用など適用除外の制度が様々に設けられています。

 

[期間]

意匠法の保護は、最長で登録から20年です。これに対し著作権法は、原則として創作時(又は公表時)から50年です。

 

[まとめ]

工業デザインであれば意匠、それ以外の芸術作品や建築物等なら著作権と、ある程度住み分けがなされています。両者が重なり合う分野では、それぞれの特性に合わせて保護を考えておくのがよいといえます。

 

 

 

 

A2. 著作権と商標権の違い

著作権と商標権はかなり違っているように思われます。むしろ、共通する要素はあまり無いと言って良いかもしれません。

 

[保護対象]

著作物は「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であり、「創作的に表現した」ものです。

一方商標は、「文字、図形、記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合」等で、商品や役務の提供について使用をするもの、であり、創作したものである必要はありません。

文字、図形、記号等でありながら「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」ものは想像し難いように、著作物自体が商標となることはなかなか考えにくいものがあります。 また、商標はその登録要件として識別力(誰かの商品であることを識別できること)があることが要求されます。例えば、短歌や俳句や絵画を商品に表示したとしても、商品の製造者のマークであるとは認識され難いため、それ自体を商標として登録することは困難です。

また逆に、ロゴ商標などが著作物として保護されるかというと、これもなかなか難しいといえます。

 

保護対象が重複する場合としては、商標に絵画が取り込まれているなど、著作物が商標の一部となっている場合が考えられます。

また、立体商標で、芸術的な花瓶などを商品化したものも考えられます。しかし立体商標の登録要件の審査基準では、「商品等の形状そのものの範囲を出ないと認識するにすぎない形状」は登録できないとされており、なかなか認められにくいといえます。

このように著作物の商標としての保護が難しいのは、両者の法の目的、趣旨が食い違っているからでもあります。

 

[保護形式]

商標法では意匠法と同様、保護を受けるには、所定の形式に従って特許庁に出願し、登録を得なければなりません。また、商標の登録にはその商標を使用する予定である商品・サービスを指定しなければなりません。さらに、他人の登録商標と類似する商標は登録されません。

 

[効力範囲]

商標権の効力が及ぶのは、登録商標及びこれに類似する商標を指定商品・サービス又は類似する商品・サービスに使用した場合、とされています。意匠権と同様、真似して作ったものであろうとなかろうと、類似していれば効力の範囲に入ります。

 

[侵害となる行為]

商標権では、主に商標の使用、すなわち商品の包装に商標を付する行為、サービスの際に商標を表示する行為などが対象となります。

 

[期間]

商標法の保護は、10年ごとに更新することができ、更新を続ける限り半永久的に存続します。

 

[まとめ]

このように著作権と商標権では、その保護対象自体が重なり合う場合は少ないのですが、現実には、例えば音楽レコードのジャケットにも商標が表示されているように、著作物の販売や譲渡の際に併せて商標が表示されていることが多いので、並列的に権利行使できる場合が少なくありません。著作物の流通を押さえる場合に、商標もまた有効な道具となるといえます。

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上に述べた以外にも、様々な要件や立証方法、登録制度など、こまかな相違は多数あります。詳しく述べるときりがないですので、詳しくは他の項目での説明を参照して頂くか、専門家にご相談下さい。

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