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「ファッションウォーカー事件」のご紹介

平成25年3月25日判決言渡 平成24年(行ケ)10310号審決取消請求事件

【事案の概要】
商標不使用取消審判において、使用の主体について争われた事案である。通常使用権者が製造販売した本件商標が付された商品を仕入れた通常使用権者と無関係の第三者の展示販売行為が、通常使用権者の使用と認められた審決に対して不服を申し立てたが、審決が維持された事案。




【評釈】
被告(商標権者)は、Fashion Walker(本件商標)の他、WALKER, City Walker, Men’s Walker, Boys Walker, Lady’s Walker, Kid’s Walker の商標登録を有している。そして、WALKERについて、平成7年9月6日から平成10年12月31日の間、グンゼ社に通常使用権を与えていた。また、同様に、平成20年、平成21年、平成22年においても契約期間を1年とする契約を締結していた。WALKERについては契約書が交わされていたが、本件商標についてはきちんとした契約書は存在していなかった。

この点、裁判所は、使用権を与えていたWALKERと本件商標は類似性が高いこと、被告はグンゼ社が本件商標、City Walkerを使用していたことを認識していたが異議を述べていないこと、からグンゼ社を通常使用権者と認めた。グンゼ社がWalkerに関する商品を展開しており、被告もこれを認識しているのであるから、黙示の通常使用権の許諾があることは当然に推測できるものであり、かかる判断は妥当なものである。

しかし、もう一つの争点である、商標権者又は使用権者ではない第三者がネットで商品を販売している行為が商標権者等の使用になるかについて、特許庁及び裁判所が「通常使用権者の使用」と認定している点は、今日の流通実情に沿わない場合もあり、疑問が残る。場合によっては、商標権者の保護に過ぎ、新たに商標使用を望む者の期待権との関係でバランスを欠く場合もあろう。

まず、裁判所は、以下のように説示する。
「商標法50条1項には,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という。)のいずれもが,同項に規定する登録商標の使用をしていないときは,取消しの審判により,その商標登録は取り消される旨規定されている。ここで,商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは,特段の事情のある場合はさておき,商標権者等が,その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり,登録商標を使用する場合のみを指すのではなく,商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において,流通業者等が,商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり,当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は,今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態であるといえるところ,このような中間流通業者が,当該商品を流通させる過程で,当該登録商標を使用している場合に,これを商標権者等の使用に該当しないと解して,商標法50条の不使用の対象とすることは,同条の趣旨に反することになるからである。」

商標法50条の趣旨は、不使用商標は保護価値(信用)が無く、商標使用希望者の選択の余地を狭める結果になる不合理を解消することにある。

従って、商標権者等によって使用されている限り取り消されないことはよい。問題は、ネット取引が発達した今日、商標権者等がもはや製造販売していない商品が未だにネットで販売されていることがある。これをもってして、商標権者の使用といえるかである。

商品を製造すれば倉庫が必要になるので、製造業者は、早めに商品を卸したいものである。卸業者も同様に早めに小売業者に卸したいものである。さらに、小売業者は店舗における物理的空間に限りがあるので、商品を早く販売したいと願う。売れない商品は一定の期間経過後処分されるのが普通である。ネット取引の発達する前の基本的な流通実情は概ねこのようである。しかし、ネット取引が発達した今日では、小売業者は物理的店舗を不要とするため、商品の陳列を半永久的に行うことができ、全国(或いは全世界)の需要者に訴えかけることが出来る。また、配送に日数がかかるのも織り込み済みなため、郊外に巨大な倉庫を設けて、そこから配送することもできる。そうすることで、豊富な品揃えが可能となり、倉庫等の諸経費も削減可能となる。即ち、ネット取引が盛んとなる前後では、商品とエンドユーザーの接触機会が長くなり、かつ、地域的制限もなくなったのである。これに伴い、商標の寿命も必然的に延びることになるが、ネットで販売されている限り商標権者等の使用に直結させてよいであろうか。

商標権者等が製造販売していない商品にかかる商標については、商標権者等によって信用蓄積行為が行われているというより、小売業者によって生きながらえていることになる。このような状況が、商標法50条2項にいう商標権者等のいずれかがその請求にかかる商品に使用していることに該当することになるか疑問である。

判決では、グンゼ社は平成21年当時(審判請求前3年以内)に黙示のライセンシーと認定している。であれば、審判請求3年以内にグンゼ社自身が自ら取引した証拠を提出すべきである。しかし、提出された証拠は第三者が楽天で販売しているサイトであり、商標権者等による積極的使用行為が見えない。

この点、「商標」(有斐閣 網野誠著)では『使用とは,商標権者・使用権者のいずれかの使用を必要とするから,登録商標を使用した商品が第三者の手により流通過程におかれていても,これらの商標権者等による使用があるとはいえないとする分離解釈もあり得よう(兼子=染野・新829頁参照)。しかしながら,「商標を付す」とは付した状態も含まれるから,例えば商標権者によって譲渡された商品は,それに登録商標が付されてそのままの状態で正当なルートで流通する限りにおいては,譲渡されるごとにまた取引者等によって広告されるごとに,譲渡人などを媒介とし,商標権者の意思に従って商標が継続使用されているものとであると解することができないであろうか。登録商標は,これを使用した商品が流通過程におかれている限り商標としての機能を果たしているものであるから,取消の対象とすべきではないと考えられるが,以上のように解するならばこれを合理的に説明し得るのではないかと思われる。』とあり、第三者による流通過程における商標の使用は商標権者等の使用とする本件と合致する。

商品には保証(サポート)期間があるものとそうでないものがある。家電製品では製品購入日から保証期間が開始するため、製造終了したとしても小売店等で販売されている限り、信用の維持に努める。従って、サポートする限りは、製造終了したとしても商標の保護管理を継続するものである。そして、これを商標権者等による使用が行われていると見てもなんら不都合は無い。

他方、保証期間がないような商品(例、本、鉛筆、ストッキング、プラスチック製品等)はどうであろうか。これらが処分品として第三者にネットで永遠と販売されている状況を商標権者等の意思に基づいた正当なルートで流通しているといえるだろうか。これは商標の不使用を免れるための「名目的な使用」といえる場合があるのではないか。これまで名目的使用は、数量が極めて少ない不自然な製造等について使用には該当しないとされてきたが、自分ではもはや製造せず無関係な第三者による販売行為をもって、使用と主張することも同様に名目的ではないか。

この点、名目的使用となって取り消された場合に第三者が同一又は類似範囲で商標登録を行った場合に、小売業者は権利行使を受ける可能性がある点は指摘されよう。しかし、小売されている商品の商標が商標法上安全であることは、最初から保障されているわけではない。商標の管理は商標権者の一存で決まるもので、いつでも放棄、消滅させることができる。小売業者が商標権者等の正当なルートであれば、小売業者のために商標権者が商標の保護管理を行うのは当然に期待されるが、無関係な小売業者はそれを期待できる立場には無い。従って、名目的使用と扱っても小売業者等に不都合が生じることはない。

以上

(弁理士  宮永 栄)

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