• JP
  • EN
お問い合わせ

Oshima, Nishimura & Miyanaga PPC

ニュース詳細

トピックス一覧に戻る

「シャトー勝沼」事件のご紹介

平成24年(ワ)第9449号不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償請求事件
平成25年7月2日判決言渡 東京地方裁判所

1.事案の概要
広告看板について、著作権法上の著作物性が争われた事案です。
原告の広告看板の著作物性は認められず、被告が広告看板を製作した行為は、著作権侵害に該当しないと判断されました。

2.争点
広告業を営む原告は、酒類の製造及び販売等を行う被告の観光ワイナリーの広告看板(原告看板)を受注、製作し道路脇等に設置した。被告は、原告以外の業者に依頼して別に広告看板(被告看板)を製作させ、設置した。

本件の争点は,①本件図柄及び本件各原告看板が著作物に当たるか,②原告が本件図柄及び本件各原告看板の著作権者であるか,③被告による著作権侵害の有無,④被告による不正競争行為(不正競争防止法2条1項1号)の有無,⑤被告による不法行為の有無,⑥被告が賠償すべき原告の損害の額である。

(原告図柄)          (原告看板1)          (原告看板2)


      

(被告看板1)              (被告看板2)



3.本件図柄及び本件各原告看板の著作物性

原告は、本件図柄及び本件各原告看板が「美術の著作物」に当たると主張しました。

著作権法上の著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)と規定されています。この規定から著作物と認められるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であること、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要です。(→著作権Q2)

裁判所ではこの条文の規定に沿って著作物性が検討され、本件図柄及び本件各原告看板は著作権法上の著作物に当たらないと判断されました。

(1)美術の著作物
著作物の具体例として「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」が挙げられています(同法第10条第1項)。また、「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。」と規定されています(同法第2条第2項)。
純粋な美術の領域に属しないいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている図案やひな型などは,鑑賞の対象として絵画,彫刻等の純粋美術と同視し得るといえるような場合を除いては,著作権法上の著作物に含まれません。

本件についてみると,本件図柄は及び本件各原告看板は,明らかに被告のワイナリーの広告等の図柄として作成されたものであり,応用美術の領域に属するものと認められる。そして,配色,図柄の形状等について一定の工夫がされているとはいい得るものの,広告の対象となる被告の名称及び施設の種類を表す文字とグラスの図柄の単純な組合せからなるもので,これらが,社会通念上,鑑賞の対象とされ,純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難である、として美術の著作物と認められないと判断されました。

(2)創作的に表現
著作物と認められるためには他人の模倣でなく、著作者自身が表現したものであることが必要ですが、ありふれた表現にすぎないものは,「創作的に表現したもの」には当たりません。

本件では、①ワイナリーの広告看板に「ワイナリー」「工場見学」の文字,方向を示す矢印及び距離,ワイングラスを想起させる図形を表示することは一般的である、②文字の配置はありふれたものの域を出ない、書体に独創性があるとはいえない、配色の組み合わせもありふれたものにすぎない、などとして,文字と図柄の単純な組合せにすぎず、著作権法上保護されるに足りる創作性があるということはできない、と判断されました。

4.広告看板も芸術的なものであれば美術の著作物と認められる場合があると考えられますが、本件のように条文に則して判断すると、応用美術として著作物性が認められないものが多そうです。本件では、原告と被告との間で看板製造契約があったことから、両者の図柄はかなり類似していますが、そもそも著作物と認められないため権利侵害として解決できないものでした。
なお、原告は原告図柄のワイングラスの図について、下記の商標権を取得しています。本訴訟と同じ時期に出願されており、商標権侵害は主張されていませんが、登録商標には文字が含まれていないもののワイングラスの形状が同じため、商標権侵害が認められる可能性があったかもしれません。

原告登録商標第5550222号(33,35,43類)

原告登録商標第5550223号(33,35,43類)

看板に関する著作物性の判断としてほかに、店舗看板に、書家の書と類似する文字が記載されていても、書の字体には著作物性が認められず複製にあたらない、とされた事例があります(平成1年11月10日東京地裁昭62(ワ)1136著作権民事訴訟)。
この事件では、書家である原告の書自体は著作物であると認めることができるとしながらも、文字の字体は本来著作物性を有さないから特定人の独占的排他的権利が認められない、と判断されています。書の字体は同一人が書したものでもそれぞれ異なるもので、単に類似するからといってその範囲にまで独占権を認めると広範にすぎ妥当でないためです。

(原告の書)         (被告の看板)

topへ戻る