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「パールフィルター」事件のご紹介

知財高判平成25年12月25日、平成25年(行ケ)第10164号
不使用取消請求(取消2012-300403) 不成立審決の取消

【概要】
使用商標「パールフィルター」は本件登録商標「PEARL\パール」と社会通念上同一ではないので本件商標は不使用として、使用と認めた審決が取り消された事件

【本件商標】
登録第2523496号
「PEARL\パール」(普通の文字、二段書き)
指定商品 第34類「たばこ」

【使用商標】「パールフィルター」「PEARL FILTER」

【関係条文】
商標法50条

【争点】
使用商標は自他商品識別機能を有しているか。
使用商標は本件商標と社会通念上同一か。

【審決の判断】
(1) 本件商標の通常使用権者D社は,本件審判の請求の登録前3年以内である平成22年10月22日から同年11月13日にかけて,東京・大阪・名古屋において,広告用ボード(「本件広告A」)の2枚目及び宣伝広告活動の実施に関する資料の3枚目(広告用シール型リーフレット。「本件広告B」)にそれぞれ「パールフィルター」の文字を付して展示又は頒布したことが認められる。
(2) 本件広告A及びBには,「キラキラきらめく」及び「パールフィルター」の文字が上下2段に金色で比較的大きく表されており,その下には,「だから,手元・口元にも」及び「優しく,キレイ。」の文字が上下2段に銀色で小さく表されている。
「だから,手元・口元にも」及び「優しく,キレイ。」の文字は,手元・口元が綺麗に見えるといった程の商品「たばこ」の特徴を表示するものと理解されるものであり,自他商品識別機能を果たさない部分である。
「キラキラきらめく」及び「パールフィルター」の文字は,上下2段に記載されていることから視覚上分離して看取され得るものであり,「パールフィルター」の文字は,独立して看取,把握されるものであって,自他商品識別機能を有している部分ということができる。
また,「パールフィルター」の文字中,「フィルター」の文字は,指定商品「たばこ」との関係において,該たばこがフィルター付きの商品であること等を表し,自他商品識別機能を果たさない部分であるから,「パール」の文字が自他商品識別機能を有している部分ということができる。
「パールフィルター」の文字中の「パール」の文字は,本件商標と同一の「パール」の称呼及び「真珠」の観念を生ずる商標であるから,「パールフィルター」は,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(3) 以上によれば,本件商標の通常使用権者D社は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,指定商品「たばこ」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標である「パールフィルター」を付して展示又は頒布していたものであるから,商標法2条3項8号の広告に登録商標を付して展示又は頒布したものと認められる。

【判決の要旨】
〔使用商標について〕
本件商品は,商品名を「ピアニッシモ・スーパースリム・メンソール・ワン」とするたばこであり,「ピアニッシモ・ファミリー」と称される商品群に属する一銘柄であること,本件商品のパッケージの正面には,本件商品の商品名を欧文字で表した「PIANISSIMO」の文字が最も大きいフォントで表示されているのに対し,「パール」ないし「PEARL」の文字は表示されていない。
本件各広告においても,最も目立つところに,「ピアニッシモ」「スーパースリム」(本件広告A)又は「PIANISSIMO」,「ピアニッシモ・スーパースリム」(本件広告B),の各文字が大きいフォントで表示されている。 (その他、本件広告C,本件広告Dも同様)
これに対し,本件各広告に表示されている「パールフィルター」や「PEARL FILTER」は,本件各広告では,いずれも中程度の大きさのフォントで,中見出しのような位置に表示され,その下に1,2行ないし数行の宣伝文言が記載されているものである。
たばこ業界においては,フィルター付きたばこのブランドとして「○○フィルター」と称する例が存在し,世界的に販売数量の多いたばこブランドである「ウィンストン・フィルター」や「キャメル・フィルター」などの例が存在する。本件各広告における「パールフィルター」や「PEARL FILTER」の表示は,本件商品のメインブランドである「ピアニッシモ スーパースリム」ないし「PIANISSIMO」程ではないにせよ,本件各広告中において前記認定のとおり中程度に目立つ態様で表示されており,単なる商品の内容や形状を説明しただけのものではなく,そのフィルターにパール状の光沢や色つやがあるとの特徴があるフィルター付きたばこである本件商品を,「パールフィルター」や「PEARL FILTER」と称してその宣伝広告活動しているものと認めることは可能である。
これらの事実からすると,被告は,そのブランド戦略からして,本件商品に「ピアニッシモ・スーパースリム・メンソール・ワン」との商品名を付し,「ピアニッシモ・ファミリー」と称される商品群に属する一銘柄として,「PIANISSIMO」の商標を強調するなどした上で,フィルターにパールのような光沢とつやのあるたばこである本件商品の特徴に由来する「パールフィルター」や「PEARL FILTER」という二次的なブランドも採用したものと認めるのが相当である。

〔本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について〕
「パールフィルター」「PEARL FILTER」のうち,「フィルター」ないし「FI
LETER」は,本件商標の指定商品であるたばこのフィルターを指す語であって,これをフィルター付きたばこに使用した場合,それ自体識別力を有しない語である。
これに対し,「PEARL」の文字は,真珠という意味の英語であり,そのカタカナ表記である「パール」を含め,日本人によく知られている言葉であるから,これをたばこという商品に使用した場合に,自他識別機能を有する商標となり得るものである。
しかし,前記認定のとおり,本件各広告においては,「パール」や「PEARL」は,本件商品の二次的ブランドである「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標の一部として使用されているにとどまるものである。「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標は,本件商品の二次的ブランドとして使用されているものである以上,取引者及び需要者はこれを一連一体のものとして認識し,把握するものであって,「パール」や「PEARL」のみを分離して認識し,把握するものではない。
したがって,本件各広告において使用されている「パールフィルター」ないし「PEARL FILTER」との商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできない。  以上によれば,本件各広告において,本件商標が使用されているとは認められない。

【解説】
本件において、特許庁審決が使用商標「パールフィルター」の文字中、「フィルター」の部分を自他商品識別機能を果たさない部分であるとして捨象し、「パール」の文字が自他商品識別機能を有している部分であるとして、本件商標の使用と認めたのに対し、判決は「パールフィルター」全体が本件商品の二次的ブランドとして自他商品識別機能を果たし得るので、本件商標と同一性がないとして、本件商標の使用と認めなかった。
使用商標とは別に、識別力を多大に発揮している商品商標が顕著に表示されている場合に、使用商標が指定商品について、商品の説明とみられる場合には、使用商標は記述的表示であって商標として使用されていないので、本件商標の使用ではない、との判断があり得る。
一方、商品について識別力を発揮し得る商標は、ハウスマーク、シリーズ商品名、個別商品名、識別力を発揮し得る機能表示等、複数であることは普通であるので、他に顕著に表示されている商標があるからといって、直ちに使用商標の識別力を否定することはできない。
問題は使用商標自体が識別力を発揮しているかである。本件では、不使用取消の請求人(原告)は「パール」は、フィルターがパールのような「光沢」や「つや」があることを説明する用語として記述的な態様で使用されているにすぎない、として商標として使用されていない、と主張した。
商標権侵害の判断については、侵害を否定する理論として商標的使用論が判例上確立している。これは、被告標章の使用が何ら識別力を発揮しない態様で使用されている場合には、原告商標の出所識別機能等を害することがないためである。一方、不使用取消の場面でも、登録商標の使用について侵害の場面におけるような「商標的使用」が求められるか否かである。
しかし、判決は「パールフィルター」が商品の説明として使用されているので「パール」の部分が商標として使用されていない、という理由ではなく、「パールフィルター」全体が本件商品の二次的ブランドとして使用されているので、本件商標とは社会通念上の同一性がないとの理由で、本件商標の使用を否定した。
登録商標に、使用商品について識別力がないと考えられる語を結合して使用する場合には、必ずしもその語について捨象されて判断されるのではなく、使用商標が一体のものとして登録商標との同一性が否定される場合があるとの教訓事例といえる。

(弁理士 西村雅子)

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