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【2023年4月1日施行】商標法改正!ポイントを解説します。

【目次】

商標法改正(2023年4月1日施行)の概要改正のポイント

1.       商標権等の回復要件の緩和

2.       国際商標登録出願に係る手続の整備

参考文献

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商標法改正(2023年4月1日施行)の概要

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本改正は、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、デジタル化、リモート・非接触など経済活動のあり方が大きく変化したことを背景としています。

本解説は、令和3年3月に閣議決定された「特許法等の一部を改正する法律案」のうち、「公布日から2年以内の政令で定める日」に施行されるものを対象としています。

 

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1. 商標権等の回復要件の緩和

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商標権等が手続期間の徒過により消滅した場合に、権利を回復できる要件が「(手続をすることができなかったことについて)正当な理由がある」から「(手続をしなかったことが)故意によるものでない」へ緩和されます

■商標法の回復制度の対象手続

商標権の回復 第21条第1項
後期分割登録料の追納による商標権の回復 第41条の3第1項
防護標章登録に基づく権利の存続期間の更新登録 第65条の3第3項

特許法、実用新案法、意匠法においても同様の趣旨の改正があります。
本改正により権利等の回復は容易になりますが、回復手数料が発生することにご注意下さい

商標法における救済手続期間は、期間徒過後の手続ができるようになった日から2月以内、かつ手続期間の徒過後6月以内です

施行日である令和5年4月1日以降に手続期間を徒過した手続が「故意でない基準」の対象となります

例えば、令和5年3月31日に商標権の存続期間の更新登録申請の追納期間(商標法第20条3項)の末日を迎える場合、翌日令和5年4月1日に手続期間を徒過したことになるため、改正法の「故意ではない基準」が救済対象となります。追納期間が令和5年3月30日に末日を迎える場合、翌日令和5年3月31日に手続期間を徒過したこととなるため、旧法の「正当な理由があること」が要件となります。

「故意によるものではない」とは、どのようなケースが想定されるのでしょうか。

例えば、出願人や代理人の職員による人為的過誤、記録管理システムのエラー、郵便サービスの過誤等が「故意によるものではない」ケースとして考えられます。

特許庁ウェブサイトに掲載の、「故意に手続をしなかった」として救済が認められない可能性がある事例を確認しておきましょう。

■特許庁ウェブサイト【事例5】

商標権の更新手続:商標権者の例

申請人(サービス業)は、商標権を有していたが、後継者がいないことから廃業することにした。

廃業するので商標権の更新登録申請は必要ないため、手続を行わなかった。

更新登録申請の手続期限の徒過後、後継者が就任することになり事業を継続することとなったため、回復理由書を提出した。

当該事例と一致しない場合でも、救済が認容されることを保証するものではありません。可能な限り、期間が徒過する前に手続を完了できることが望ましいと思われます。

商標権等の回復には、回復理由書の提出等の手続が必要です。記載事項等が明確に定められているので、不安のある方は弁理士等の専門家へご依頼下さい。

 

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2. 国際商標登録出願に係る手続の整備

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ここからは、日本国で権利を取得する場合における国際商標登録出願に関する改正です。日本企業は日本国内の権利を基礎として外国で権利を取得するケースが大半のため、改正による影響は少ないと思われます。

(1)個別手数料の納付方法が変更されます。

従来、マドリッド協定議定書に基づき日本を指定国とする場合、個別手数料を国際出願時と設定登録時に分けて納付する二段階納付方式が採用されていました。

しかし、二段階納付方式は海外の出願人にとって手続負担となっていたので、大多数の締約国が採用する一括納付方式に変更されることになります。

本改正により、出願料相当分と登録料相当分の個別手数料を出願時に一括納付することになります。なお、日本で商標権取得が出来なかった場合でも、個別手数料の返還請求はできないことにご注意下さい。

(2)登録査定の謄本の送達方法が見直されます。

従来、海外の出願人に対して国際郵便で登録査定を通知していました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で一部の外国に対して送達が滞り、商標権の設定登録が遅れる結果、海外の出願人が不利益を受けるという事態が生じました。

この状況を踏まえ、海外の出願人への電子的な通知をもって、国際商標登録出願に係る「登録査定の謄本」の送達に代えることができるよう、見直されました。

本改正により、日本国特許庁の「保護を与える旨の声明」が国際登録簿に記録されることで、「登録査定の謄本」の送達があったものとみなされます

つまり、本改正により、登録料相当分の手数料は出願時に一括納付されているので、国際登録簿への記録によって、商標権が設定登録されることになります。

 

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参考文献

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「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

「特許法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」及び「特許法等関係手数料令の一部を改正する政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

令和3年法律改正(令和3年法律第42号)解説書 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

期間徒過後の救済規定に係る回復要件が「正当な理由があること」から「故意によるものでないこと」に緩和されます | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 

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文責:森貴信 2023/3/7時点

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